今川氏の歴史3.「武勇で室町初期に活躍、今川氏の隆盛を築いた当主」2代今川範氏

今川氏の歴史
今川氏の旗印「赤鳥」

室町時代初期、

南北朝の内乱が続く中、武家社会は混沌の只中にありました。そんな中で、今川家の存在感を一気に高めたのが、今川範氏(いまがわ のりうじ/1316-1365)です。

範氏は武勇に優れ、弟の今川貞世(了俊)は後に九州探題となるなど、今川家はこの時代に大きく飛躍していきます。


1316正和5年今川範氏生まれる
1330元徳2年足利義詮生まれる
1332今川氏家生まれる
1334建武元年後醍醐天皇による建武の新政
今川泰範生まれる
1335建武2年中先代の乱が勃発
南北朝の内乱
1336建武3年・延元元年建武式目を制定し室町幕府成立
1338建武5年・延元3年足利尊氏が征夷大将軍となる
1349貞和5年・正平4年足利基氏を鎌倉公方に任命
1351観応2年・正平6年観応の擾乱
1352観応3年・正平7年足利直義没する
1353文和2年・正平8年今川範氏が家督を継承、2代当主となる
1358延文3年・正平13年足利尊氏没する
足利義詮が2代征夷大将軍となる
1365貞治4年・正平20年今川範氏没する
今川氏家没する
1367貞治6年足利義詮没する
今川泰範家督を継承、3代当主となる
1369応安元年足利義満が3代征夷大将軍となる

◆ 観応の擾乱(1350〜1352)と今川氏の立場

室町幕府は、兄の足利尊氏が武家の棟梁として軍政を担い、弟の足利直義が政治・訴訟を管轄するという分業体制をとっていました。

しかし、尊氏の側近である高師直と直義の対立が激化し、1350年(観応元年)に直義は京都を脱出して高師直討伐を宣言します。これが観応の擾乱の始まりです。

翌1351年、直義は高師直を討つことに成功しますが、今度は尊氏・義詮父子と直義が対立。直義は南朝勢力と結び、尊氏を追い詰めていきました。

この混乱の中で、今川氏も重要な役割を果たします。

父・今川範国は幕府の訴訟機関「引付方」の長官で、直義寄りの立場でしたが、範氏は一貫して足利尊氏側として戦いました。南朝と結んだ井伊氏・狩野氏・石塔氏などと対立し、駿河・遠江を舞台に戦いが続きます。

◆ 薩埵峠の戦い 【 一人当千の武勇】

1351年(観応2年)、尊氏と直義はついに薩埵峠(さったとうげ)で激突。

この戦いで尊氏軍の中心として戦ったのが今川範氏でした。

範氏の奮戦により尊氏軍は勝利し、鎌倉を制圧。敗れた直義はその後、降伏後に急死(毒殺説あり)します。

尊氏はこの功績を称え、範氏に「一人当千(いちにんとうせん)」と書かれた感状を授けたと伝えられています。

◆ 駿河守護への就任と南朝勢力との戦い

観応の擾乱後、範氏は1352年(観応3年)に遠江守護職を与えられますが、まもなく父範国に譲り、自身は翌1353年に駿河守護に任命されます。

以降、生涯を通して駿河を統治し、各地で南朝勢力との戦いを続けました。

1353年(文和2年)、範氏は石塔氏が拠点とした安倍城・大津城(島田市)・徳山城(川根本町)を次々に攻略。

足利尊氏から再び感状を授けられています。

その後、1361年ごろには石塔氏が北朝側に転じたため、駿河・遠江では全国に先駆けて南北朝の争いが収束していきました。

◆ 家督をめぐる運命 ― 早すぎた死と複雑な継承

今川範氏には二人の男子がいました。

長男の氏家、そして次男の泰範です。

範氏は氏家を後継者とし、泰範は鎌倉・建長寺で出家させていました。

しかし1365年(貞治4年)、範氏は父の今川範国よりも先にこの世を去ります。

範国は後継に悩み、弟の今川貞世(了俊)またはその子の貞臣を推す案も出ましたが、貞世自身が辞退。

範氏の遺志を尊重し、長男の氏家を守護職とするよう尽力しました。

やがて将軍足利義詮から氏家への補任状が出され、今川家の後継が正式に決定します。

しかし、氏家はまもなく早世。

この悲報により、出家していた次男・泰範が還俗し、3代目今川泰範として家督を継ぐことになりました。

◆ 今川範氏ゆかりの地 ― 慶寿寺(島田市)

静岡県島田市の慶寿寺は、1345年(貞和元年)に今川範氏が京都から南江和尚を招いて開いた寺院です。

かつては今川城としても利用され、今川範氏の菩提寺として知られています。

戦乱の時代を駆け抜けた範氏の面影が、今もこの地に静かに残されています。

島田市にある慶寿寺
島田市大草にある慶寿寺

次章へ ― 「知将・今川貞世(了俊)」の時代へ

今川範氏の死後、今川家は次代の転換期を迎えます。

その後、九州探題として活躍し、『難太平記』を著すなど文化人としても名を残すのが弟の今川貞世(了俊)です。

次章では、九州を舞台に戦と政治の狭間を生きた知将・今川了俊の生涯を詳しく見ていきましょう。

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